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葬儀屋社長奮戦記

2011年10月18日 火曜日

僕は弟と相談して病院に営業をかけることにした。

僕は弟と相談して病院に営業をかけることにした。
実はある仕出屋のYという男がこう持ちかけてきた。
「実はね、専務さん(え?僕って専務だったのなんて突っ込みはせずに)今度隣町に診療所が開院するんですが、いわば老人病院で回転率がすごくいいんですよ。20のベットが一年かからずに総入れ替えになるくらいなんです。そこのオープンセレモニー費用の半額を専務さんの会社で持っていただければ指定業者になれるんですよ。まあ料理をうちが持ちますからコンパニオン代ぐらいで済む話ですよ。」
(一年で20人としても月約2件の仕事か?悪くないな。)と皮算用して「で?いくらぐらいかかるの?」
「大体50万ぐらいだと思いますけど、その後仕事が取れてもキックバックしなくてもいいそうなんですよ。これはこの業界じゃ破格のいい話なんですよ。とにかくうちの料理もこれから使ってくれるということで特に専務さんにお話させていただいたんですよ。」
僕はそんなもんかなーなんて思いながら時代劇の悪代官になったような気がして思わず(おぬしも悪よのー)と心の中でつぶやいてしまったが、結局その診療所の指定業者になることにした。
無事その診療所もオープンして本当に間髪いれずに搬送の依頼が発生した。
僕たちは病院に駆けつける。指定された病室からストレッチャーに故人をのせて家まで運ぶ。
でも運んで終わりだった。
たいてい地元の葬儀屋さんに頼むからとか互助会に入っているからとかの理由で仕事にはなかなか結びつかなかった。
十件運んで一件取れればいいほうだった。
それに病院からの意向で搬送は病院のサービスということで料金はガソリン代と搬送布団代で一律五千円をいただくだけだった。
仕事は取れないが夜中にいつお呼びがかかるか分らないので僕は24時間携帯を肌身離さず持つようになった。
トイレでも風呂でも携帯を離せないのでよく水没させてしまった。
夜中に社長を呼び出したこともあったが晩酌をやってしまっていて使い物にならなかった。
そしていつ仕事が入るか分らないので僕は酒が飲めなくなってしまった。
以前は一件仕事をやってから何日も仕事が入らなかったのであんまり気にしたことがなかったけれど、今度からは責任ある立場なので大変だった。
人間の終焉とは不思議なもので病院からの電話は決まって深夜だった。夜中の2時までが要注意でその時間が過ぎれば電話のかかってくることは先ず無かった。
その晩もそろそろ2時を回ろうとしていた。
僕の携帯が鳴った。病院からだった。
僕はいつものように弟に連絡すると自宅を出た。
会社で弟と落ち合って病院に向かう。
もうベテランだ。勝手知ったる病院だが、やはり深夜の病院は何となく不気味だ。
ロビーから2階の病室にストレッチャーを運ぶ、けれどその日に限ってナースの姿も遺族もいない。
指定された病室は大部屋だ。そっとドアを開けて中にストレッチャーを入れる。
ベットが4つあってそれぞれお年寄りが休んでいた。
僕は声をひそめていった。
「どの人かな?」
弟は言った「この人ですよ。」
弟が指差したおばあちゃんは動かないし確かに逝ってるみたいだった。
でも弟にそんなことが分るはずも無いと思いもう一度息をひそめて様子を伺って見る。
なるほどと思えるふしもある。
隣で弟は「ねえそうでしょお兄さん」と得意そうだった。
「ンーそうかもなあ」僕も何となく納得してそのおばあちゃんの脇にストレッチャーを着けようとした矢先、看護婦さんが入ってきて
「アッ違う、そっちじゃない、奥の右側の方」とタイミングよく言ってくれたので僕たちは間違えずに済んだのだった。
無事おばあちゃんを送り届けた帰り道、弟が言った。
「さっきは危なかったですね。間違えて連れてっちゃったら大騒ぎですよ。」
「あたりめ~だろ、どこに生きてる人間連れてっちまう葬儀屋がいるってんだよ。」
「あはは・・・・ここに居たりして・・」
「バカヤロー」
弟は何故かツボにはまったらしく帰る道すがらずっと思い出し笑いをしていた。
深夜の国道に軽のバンタイプの搬送車が走っていたら、中では人に言えないような事が話されてるかも知れないのだ。(間違えそうになったおばあちゃんゴメンネ。長生きしてね。)


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